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Ouji's Blog

も脅かされることもなく

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も脅かされることもなく

も脅かされることもなく、ということになると、おれにはそれくらいしかいいアイデアが思い浮かばない。

 

 それよりもなによりも、局長を拉致る。もしくは、いまここで、これ以上の戦いは無意味であることを諭し、どうにか身をひいてもらうか・・・。生きつづけることを、死んではならぬことを、わかってもらえば、おのずと身をひいてくれるはず。

 

 

「やはり、おれがどうにかするしかない、か・・・」

をよんだのか、肺癌 あるいは自分でそうと悟ったのか、副長がちいさなため息とともにもらす。

 

 それらは、納戸の埃だらけの床へとゆっくりと落ちてゆく。「副長・・・。局長は、副長が説得すればするほど、依怙地に、いえ、責任を感じられてしまうのではないかと。かえって、とかかわりのない、それどころか幕府とも戦とも関係のない、たとえば、ご家族とか親類とか、そういう方から説得してもらった方がいいのではないでしょうか?」

 

 副長は、おれの提案をしばし脳内で吟味していたようだが、さきほどと同様、ちいさなため息とともに言葉を吐きだす。

 

「せっかくだが、それも望みはねぇ。妻子をないがしろにしてるってわけじゃねぇんだが・・・。おまえのいた時代とちがって、ってもんは、家族より家が大事だし、それよりも士道や志を重んじる。それは、たるものの、奥方や子も同様。夫、もしくは父親の志のほうが、情より重んじられる。無論、どっちも心の底じゃぁ、どう思ってるかわからんがな。が、かっちゃんのは、妻子は二の次だ。奥方のつねさんは、器量がいまいちでな。もいまいちなんだが、それでも、かっちゃんを頼ってるし、かっちゃんも信頼して留守を任せてる」

 

 副長は、狭苦しい納戸のなかで、器用に両肩をすくめる。

 

「京にいた、つねさんや娘のたまに幾度文を記したと思う?」

 

 その問いより、局長の娘の名がたまであることを、いわれて思いだす。

 最近、たまと呼ばれるようになった俊冬のの三分の一にも満たぬ。江戸へ戻ってからも、二度かえっただけだ。もっとも、それは、おれたちに気をつかってのことだろうが・・・。それにしても、っていうところだろうが、ええ?ぐだぐだいっちまったが、家族だろうが実兄だろうが、かっちゃんを変心させることはできねぇってこった」

「ですが、だれかにやってもらわないと・・・」

「くそったれめ・・・」

 

 そのとき、納戸の引き戸が突然ひらいたので、副長もおれもぎょっとした。

 

 野村である。胸元に、大判の冊子を幾冊か抱えている。それが、床に落下する。驚いて、床に落としたのだ。

 

 しばし、二対一でみつめあったままかたまってしまう。

 

 ややあって、野村がやっと動いた。一歩退くと、無言のうちに引き戸に掌をかけ、それをゆっくりしめはじめる。

 

「ちょっ、利三郎・・・」

 

 慌てた副長が、すらりとした指を伸ばしてとめようとするも、無情にも引き戸が閉ざされてしまう。

 逆天の岩戸のように・・・。

 

 閉ざされる直前に垣間見えた、野村の・・・。

 

 みてはいけないものをみてしまい、それをネタに脅してやろうという小悪党のであった。

 

 ついに、副長とBLチックな噂になるかも・・・。って、よろこんでる場合じゃない。

 

 

 でっ、結局、結論にはいたらぬまま、おれたちは納戸からそろそろとでることになった。

 

 おっと、そのまえに、野村が落とした冊子をぱらぱらとめくると、春画であった。

 つまり、エロ本であった。

 

 野村・・・。おまえ、絶対に宮古湾で戦死するはずないよな?

 確信以上のものを、得たのだった。

 

 おれの その夕刻、双子が戻ってきた。それぞれ、小型の荷車を曳いている。

 

 俊冬の荷車には、日本橋の魚市場と神田の青果市場で仕入れた食材がたくさん積まれている。みな、わいた。ちゃんと、夕餉の支度の時刻までに戻ってきたことはもちろんのこと、今宵もまたごちそうにありつけるのである。わくのも当然であろう。

 

 そして、俊春の荷車には・・・。

 

「これは、なんだ?」

 

 集まっているのは、隊士だけではない。局長と副長も庭にやってきている。

 

 開口一番、局長が尋ねる。

製のスペンサー銃でございます。七連発の元込ライフル銃でございまして・・・」

 

 俊春が、しれっと応じる。

 

「いや、そうではない」

 

 局長は苦笑しつつ、でかくて分厚い掌で荷車に積まれている銃を指し示す。

 

「これだけの銃を購入できる費用は、どうしたのかと。それどころか、こちら側の大量の魚や野菜の費用も、だ」

「費用っ!」

「費用っ!」

 

 双子は同時に掌をうちあわせ、そんな言葉を生まれてはじめてきいたかのような反応を示す。

 

「うわー、いっぱいの銃ですね。あれ、この箱に家紋が入ってる。これって、どこの家紋だっけ?」

「一の下に黒い丸が三つ・・・。わかんない」

 

 市村と田村が、ちいさな木箱をみつめながらわいわいいってる。

 

 一の下に黒い丸が三つ・・・。「一文字三星」。四柱推命みたいだが、もちろんちがう。

 

「長州の毛利家の家紋だよ。長州の・・・」

 

 おれの言葉に、全員の

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